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デュナン
「デュナン=ナッツです。オリュンポスでES.W.A.T.という特殊部隊で働いていま~す!」
ブリアレオス
「同じく、ES.W.A.T.所属のブリアレオス。ヘカトンケイル・システム搭載のサイボーグだ」
デュナン
「ヘカトンケイル・システムっていうのは『百腕巨人』って言われるように、ひとりでも空母一隻を運用できるような多重情報処理能力システムのことなの」
ブリアレオス
「元々はギリシア神話に出てくる、ヘカトンケイル(Hecatoncheires)という百本の腕と五十の頭を持つ巨人と同じ名前なのはなにか意味があるんだろうな」
デュナン
「サイボーグ(Cyborg)っていうのは、サイバネティック・オーガニズム(Cybernetic Organism)の略称で、もともと人間だった人に機械なんかの補助装置を加えることで半機械化処置を施した人間……という認識でいいのかな?」
ブリアレオス
「コンタクトレンズをしている人間もサイボーグといえばサイボーグかもしれないな」
デュナン
「この世界ではいろいろとサイボーグの人たちは規制されてることもあるんだけど、一応『人権』を認められて社会生活を送れるようにはなってるけどね」
ブリアレオス
「世界中で起きた武力紛争に巻き込まれてサイボーグ化を余儀なくされるものや、ファション感覚で自らサイボーグになるものもいるからな。今は個性のひとつと言ってもいいんじゃないか?」
デュナン
「身体機能のほとんどが人工の機械になっちゃったら、アンドロイドとサイボーグの差なんてほとんどないと思うんだけどね」
ブリアレオス
「それは人間とバイオロイドでも比較されることだな」
デュナン
「バイオロイドにも人権はあるのかしらね?」
ブリアレオス
「バイオロイドは、人のために奉仕するプログラムが遺伝子レベルで組み込まれた、人造人間だ。外見は人間そのままだし、意識も感情も持ち合わせてる。ヒトミや義経を見てればわかるが、人間と変わらないだろ?」
デュナン
「そう思うんだけど、彼らって、ある意味、オリュンポスの備品と同じなんだよね」
ブリアレオス
「俺達も社会の備品という見方もあるだろ」
デュナン
「税金を納める働き蜂?」
ブリアレオス
「それを言うな」
デュナン
「でも総合管理局にスカウトされて、オリュンポスに移住できてよかったよね」
ブリアレオス
「ああ。そうじゃなけりゃ、今も廃墟で足元ばかり見て暮らしてたな」
デュナン
「埋もれた缶詰捜すため? それとも地雷やブービートラップを見極めるため?」
ブリアレオス
「お前も、包丁よりもナイフが似合ってた」
デュナン
「包丁は今も持ちませんけどね~。ベー、だ」
ブリアレオス
「料理に関しちゃ、俺がサイボーグになる前から期待してなかったさ」
デュナン
「ひっどーい!」
ブリアレオス
「だがオリュンポスにいれば食べるのに困らない。人間は自分の望む生活を手に入れ、面倒なことは人間のために奉仕することを喜びと感じるバイオロイドが処理してくれる。まさに、人間が『神』の扱いを受ける楽園だ」
デュナン
「なんのご利益もない神様ですけどね。私はバイオロイドも人間も境界線はない感じがするけどね」
ブリアレオス
「そうだな。俺達と同じように、飯も食えばベッドでも寝る」
デュナン
「そうそう、バイオロイドだからって味覚は私たちと同じだもんね。そこで相談なんだけど~、最近、なかなか評判の四つ星バイオロイドシェフが作るイタリアンのお店ができたんだけど、行ってみない? もちろん、私がカード切るわ」
ブリアレオス
「お前が俺の名前で作ったカードを切るつもりなら、やめとく」
デュナン
「あ、あれは、偽装訓練の一環で~」
ブリアレオス
「ヘカトンケイルを騙せると思うか?」
デュナン
「ごめんなさい」
ブリアレオス
「まあ、いいさ。仲直りの印に、俺がお前の名前で作ったカードでご馳走してやろう」
デュナン
「え!?」